ANAは、チームで力を合わせ、大きな仕事に挑む会社。
JALは、一人ひとりが自分で考え、現場から会社を良くしていく会社。
仲間と大きな挑戦をしたいならANA、自分の工夫で変化を生みたいならJALが合いやすい。
両社とも、仕事には協働と主体性の両方が必要です。そのうえで、ANAはチームで挑む姿勢、JALは一人ひとりが現場を変える姿勢を、公式の行動原則でより強く打ち出しています。
会社選びの基準は、組織が仕事をどう進めるかと、自分が力を発揮した経験がどこで重なるかです。
この記事では、社風を主役に、事業・安全・採用設計を根拠として比較します。会社名の印象や売上の大小だけで終わらせず、面接で「なぜANA/なぜJALか」を自分の言葉で説明する材料にしてください。
どちらが向いているか:志向別の判断表
次の表で、自分の経験を最も具体的に語れる行を探します。ANAの行が多ければANA、JALの行が多ければJALを志望理由の軸にできます。
自分の経験に近い行を探す
| 自分が重視すること | 向いている会社 | 志望動機で語ること |
|---|---|---|
| 異なる専門や立場の人をつなぎ、大きな目標へ進める | ANA | ANA's Wayのチームスピリットを、志望職種の部門連携でどう実感できるか |
| 自分で課題を見つけ、運用や収益の改善を続ける | JAL | JALフィロソフィと全員参加経営が、志望コースの仕事でどう表れるか |
| 国際貨物や複数ブランドを含む大きなグループ基盤に関わる | ANA | ANA・Peach・NCAなどのうち、どの法人・機能に関わりたいか |
| マイルを起点に、航空以外の顧客接点や収益を育てる | JAL | マイル/金融・コマースのどの顧客課題に関心を持つか |
| 安全を、データと報告を通じた未然防止として考える | ANA | SMSやヒヤリハットの考え方と、自分の改善経験の接点 |
| 安全を、記憶の継承と組織学習として考える | JAL | 安全啓発センターや報告制度を、自分の行動原則にどう結ぶか |
ANAが多い人は、関係者を束ねた経験を「チームで大きな挑戦をする仕事」へつなげます。JALが多い人は、自分で課題を見つけて改善した経験を「現場から会社を変える仕事」へつなげます。
就活生
3行で結論:チームで挑むANA/一人ひとりが現場から変えるJAL

ANAとJALは、国内線・国際線を運航し、LCCやマイル関連事業も持つため、事業の名前だけでは違いが見えにくい二社です。だからこそ、就活では「何をしている会社か」の次に、「その仕事をどんな考え方で進める会社か」を比べます。
公式の行動原則から「力点」の違いを見る
ANAがグループの行動指針として掲げるANA's Wayには、「チームスピリット」と「努力と挑戦」があります。一方、JALはJALフィロソフィと部門別採算制度を再建後の経営に取り入れ、「一人ひとりがJAL」として考え、行動する全員参加経営を重視してきました。
この二つを就活向けに言い換えると、複数の会社・機能をつないで大きな価値をつくりたい人にはANAが向いています。現場の課題と採算を自分ごとにして改善したい人にはJALが向いています。
自分が語りやすい経験から比べる
この「チームで挑むANA/現場から変えるJAL」が、この記事を通じた会社選びの軸です。
社風の違い:ANA's WayとJALフィロソフィ

社風を「明るい」「体育会系」「堅実」といった口コミだけで決めると、面接で根拠が弱くなります。両社の公式な行動原則と、それが制度や仕事にどう表れているかを根拠にします。
公式理念を同じ軸で比べる
就活生
編集部
| 比較軸 | ANA | JAL | 面接での読み替え |
|---|---|---|---|
| 公式の行動原則 | ANA's Wayで「安全」「お客様視点」「社会への責任」「チームスピリット」「努力と挑戦」を掲げる | JALフィロソフィを行動基準とし、「一人ひとりがJAL」「採算意識」を全員参加経営の土台に置く | 理念を、自分が取った行動と結ぶ |
| 仕事の進め方を考える入口 | 異なる機能・会社を横断して力を合わせる | 現場の判断や改善を経営と近いものとして捉える | 自分が得意な協働・改善の型を選ぶ |
| 共通すること | 安全を最優先に、お客様へ価値を届ける | 安全を最優先に、お客様へ価値を届ける | 二社を単純な性格対比にしない |
ANAは協働経験、JALは改善経験につなげる
ANAを志望するなら、「チームで頑張りました」だけでは足りません。意見や専門が異なる人たちの間で、自分がどんな役割を果たし、何を前に進めたのかを示します。
例えば、学園祭の企画で広報・会計・出演者の要望を整理した経験があるとします。その経験なら、複数の機能で品質をつくる仕事への関心と結びつけられます。
JALを志望するなら、「主体性があります」と言い切る前に、現場の不便や数字の変化をどう捉え、誰に働きかけ、何を改善したかを振り返ります。アルバイトで引き継ぎ漏れを記録し、スタッフと運用を変えた経験などは、現場から会社を良くする姿勢を説明する入口になります。
社風は仕事にどう表れるか:組織の動き方・安全教育・採用設計

理念だけで社風を判断しないために、組織が安全をどう学び、どんな入口で人を採るかも見ます。航空業界では安全は両社に共通する最優先事項です。その実装の違いは、どちらが安全かを決める材料ではなく、組織学習をどう設計しているかを理解する材料になります。
就活生
安全教育に表れる違い
ANAはSMS(安全マネジメントシステム)、ヒヤリハットの収集、データに基づく未然防止、心理的安全性を含む改善を進めています。予防の仕組みを回しながら、関係者でリスクを早く拾う考え方です。
JALは安全啓発センターで事故の実物資料と記憶を教育に継承し、安全憲章・報告制度を運用しています。過去の事故を忘れず、組織の学びへ変え続ける設計です。
採用設計に表れる違い
採用設計にも、比較する入口があります。
就活生
ANAのGS職は、オペレーション、ビジネス/マーケティング、コーポレート、整備技術、運航技術、IT・データなどのセグメント別・専門採用です。
JALの業務企画職は、コーポレート、オペレーション、ビジネス/マーケティング、データサイエンス/デジタルテクノロジー、エアラインエンジニアの5コースを設けています。
コース名が似ていても、応募先の法人、初期配属、担当業務、異動の範囲は異なります。「どのコースか」だけでなく、入社後にどの部署とどう協働するのかまで志望理由に入れると、会社名だけの比較から抜け出せます。
事業構造の違い:ANAのグループ総合力/JALの全員参加経営と収益改革

社風の違いを、事業の規模だけで証明することはできません。それでも、どの領域に人や資本を配分しているかを見ると、仕事の広がりと今後の論点が具体化します。
規模ではなく事業の組み合わせを見る
| 観点 | ANA | JAL | 就活で見るポイント |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期の連結規模 | 売上高2兆5,392億円、営業利益2,174億円、純利益1,690億円 | 売上収益2兆125億円、EBIT2,180億円、純利益1,376億円 | 売上規模の方向感は分かるが、利益の単純な順位づけはしない |
| FSC・LCC | AirJapanを2026年3月に休止し、ANAとPeachの二ブランドへ再構築 | FSCに加え、ZIPAIRとSPRING JAPANを展開 | 「LCCがあるか」ではなく、ブランドごとの役割を見る |
| 貨物 | NCAの完全子会社化後、貨物専用機はANAとNCAで計16機体制 | 国際貨物ではアジア=北米需要の取り込みを進める | ANAは貨物基盤の拡大、JALは国際貨物の需要獲得を志望職種と結ぶ |
| 非航空領域 | ANA Pay、ANA Mall、ANA Pocket、ANAガス、ANAモバイルなど生活接点を広げる | JMB会員4,000万人、JALカード会員360万人を基盤に、マイル/金融・コマースを成長領域に置く | 航空の外にどんな顧客接点をつくるかを比べる |
就活生
ANAは横断力、JALは収益改革が焦点
ANAの企業研究では貨物・Peach・生活サービス、JALの企業研究では全員参加経営・マイル/ライフ事業を詳しく解説しています。
ANAは、全日本空輸、Peach、NCAを含む貨物、マイルを起点とする生活サービスなど、複数の会社・機能をグループで持ちます。国際旅客・国際貨物の拡張、機材やDXへの投資を掲げるなかで、部署・法人をまたいで価値を組み合わせる場面を想像しやすい構造です。
JALは、FSCを利益の中心に置きつつ、マイル/金融・コマースを独立した成長領域として育てています。国際線・次世代モビリティも含む事業構成の拡張を計画しています。
再建後に重視してきた全員参加経営と収益改革を、航空以外の顧客接点にもどう広げるかが、仕事を見る切り口になります。
採用・仕事・キャリアで比較:入社後に何を経験できるか
「ANAに入る」「JALに入る」という表現だけでは、就活の比較としては粗すぎます。
ANAホールディングスは上場親会社で、航空の中核は全日本空輸です。JALは日本航空が上場会社であり、航空事業・主要職種の採用主体です。さらに空港、整備、LCC、デジタル、カードなどはグループ各社が採用するケースがあります。
応募法人・コース・配属を分ける
| 比較する項目 | ANAでの見方 | JALでの見方 | 志望動機に入れること |
|---|---|---|---|
| 応募法人 | 全日本空輸のほか、空港、整備、Peach、NCA、ANA Xなどで採用が分かれる | 日本航空の主要職種に加え、空港、整備、地域航空、JALカード、JALデジタルなどで採用が分かれる | エントリー先の法人名を正式名称で書く |
| 志望コース | GS職のセグメントごとに専門性が分かれる | 業務企画職は仕事の領域ごとに5コースへ分かれる | コース名ではなく、担当したい業務を一文にする |
| 配属と異動 | グループや職種で範囲が異なる | コースと配属部署は同じ意味ではない | 募集要項にある初期配属・出向・異動の範囲を踏まえて、実現したい仕事を語る |
年収は応募法人と職種をそろえて見る
年収についても、グループ全体、上場会社単体、中核事業会社、職種の数字を混ぜないことが重要です。同じ会社名でも、客室乗務職、業務企画職、技術職、パイロットなどで仕事内容と給与の構成は異なります。
平均年収ではなく、応募法人・職種の初任給、手当、勤務地、勤務形態を比較します。
強みの裏返しで比較:どんな人には合わないか
強みの裏側には、合いにくい働き方があります。ここまで言い切ると、志望理由が会社への称賛ではなく、自分の選択になります。
就活生
ANAは小さな範囲で仕事を完結したい人には合いにくい
ANAは組織・事業が広いぶん、担当領域や所属法人によって仕事との距離が大きく変わります。
少人数の一つの現場だけで、自分の担当をすぐに完結させたい人にはANAは合いにくい会社です。グループ横断の仕事では、異なる法人・部署との調整に時間がかかります。貨物事業も、関税、景気、EC需要などの市況変動を受けます。
JALは完成した仕組みの中で働きたい人には合いにくい
JALは、一人ひとりが採算を考え、現場から改善する会社です。
2025年度の国内線実効EBITは0億円で、JALグループ経営ビジョン2035は国内線を構造改革の対象に置いています。完成した仕組みの中で決められた仕事をしたい人には合いにくく、課題のある事業を自分で変えたい人に向いています。
社風が合いそうなら、事業課題は気にしなくてよいですか?
いいえ。社風と事業課題はセットです。ANAの貨物拡大も、JALの国内線構造改革も、仕事の機会であると同時に難しさです。ANAなら複数組織をつなぐ強み、JALなら現場から改善する強みを、各社の課題解決に結びます。燃油、為替、需要の変化は両社に共通するため、二社の優劣ではなく航空業界で働く覚悟を示す材料です。
「なぜANA/なぜJAL」を自分の経験につなげる

志望動機は、企業の良さを並べる文章ではありません。「会社の事実」と「自分の事実」の接点を示す文章です。次の四つを順に埋めると、憧れやイメージから抜け出しやすくなります。
就活生
4列メモで企業と自分の接点を作る
ANAとJALの回答骨格に当てはめる
ANAの骨格は、次のように作れます。
私は【実現したいこと】に取り組みたいと考えています。ANAは【NCAを含む国際貨物/ANAとPeach/マイルを起点とする生活サービス】をグループで組み合わせています。私は【複数の人・機能をつないだ経験】で【自分の行動】をしたため、【志望法人・職種】で【具体的な仕事】に取り組みたいです。
JALの骨格は、次のように作れます。
私は【実現したいこと】に取り組みたいと考えています。JALは【JALフィロソフィ/安全の記憶の継承/現場と経営を近づける仕組み】を土台に、【マイル・ライフなどの成長領域】を伸ばしています。私は【現場改善や周囲を巻き込んだ経験】で【自分の行動】をしたため、【志望コース・職種】で【具体的な仕事】に取り組みたいです。
提出時は、企業名を入れ替えても成立する言葉、経験していない出来事、配属を言い切る表現を削ります。自分が面接で説明できる事実だけを残せば、借り物ではない志望動機になります。
説明会・OB訪問で違いを見抜く質問
社風は、社員が語る具体的な仕事の場面に表れます。「御社の社風は何ですか」と抽象的に聞くのではなく、意思決定、部門連携、若手の改善提案を聞きます。社員がどの関係者・判断基準・顧客を自然に語るかが、会社の価値観です。
実際の意思決定と改善の場面を聞く
- 意見が割れたとき、チームでは誰がどう意思決定しますか
- 若手が現場の課題に気づいたとき、提案から実行までどんな支援がありますか
- 志望コースの仕事は、どの部署・グループ会社と連携することが多いですか
- 初期配属後、専門性を深める人と領域を広げる人には、それぞれどんな機会がありますか
- 安全に関する気づきや失敗を、日々の仕事でどのように共有・改善していますか
- 今の事業課題に対して、若手に期待される役割は何ですか
社員の答えを志望動機へ反映する
社員の答えが想定と違えば、志望動機をその場で更新します。企業研究は、会社を褒めるためではなく、自分が選ぶ理由を言い切るために行うものです。ANAの企業研究とJALの企業研究を使い、応募法人・職種まで含めて「なぜこの会社か」を一文にしましょう。
よくある質問
- ANAとJAL、就職するならどちらが上ですか?
- 仲間と部門を横断して大きな挑戦をしたい人にはANA、現場の課題を自分で見つけて仕組みや収益を変えたい人にはJALが向いています。売上や利益の順位ではなく、志望職種で発揮したい強みを基準に選びます。
- ANAは挑戦、JALは堅実という理解で合っていますか?
- ANAは「チームで挑戦」、JALは「現場から変革」と捉えるのが実態に近いです。ANAはANA's Wayで「チームスピリット」「努力と挑戦」を掲げ、JALはフィロソフィを土台に一人ひとりの採算意識と改善を重視しています。
- 売上や年収だけでANAとJALを比較してもよいですか?
- 売上や年収は応募先を絞る参考情報です。志望理由は、ANAなら部門横断の挑戦、JALなら現場起点の改善と、自分の経験を結んで作ります。なお、ANAは日本基準、JALはIFRSで開示しており、営業利益とEBITは同じ指標ではありません。
- ANAとJALの採用コースは、配属先まで決まりますか?
- 採用コースだけで個別部署までは決まりません。ANAのGS職はセグメント別・専門採用、JALの業務企画職は5コース制です。志望動機ではコース名ではなく、その入口から担当したい仕事まで話します。
- 説明会やOB・OG訪問では何を聞けば社風が分かりますか?
- 理念の感想ではなく、実務の場面を聞きます。意見が割れたときの意思決定、部門横断の進め方、若手が改善を提案した事例、初期配属後に専門性を深める過程を具体的に尋ねると、自分との相性を判断しやすくなります。