「博報堂 激務」と検索したあなたが知りたいのは、たぶん2つだけです。
自分は受けるべきなのか。そして、なぜ激務と言われているのか。
先に、両方に答えます。読み進めるかどうかは、それから決めてください。
博報堂を受けるべき人・やめておくべき人
受けるべき人
- 企画・アイデアの仕事そのものに強い興味があり、納期直前に業務が集中することを織り込める
- クライアントの都合で予定が動くクライアントワークの構造を、割り切って受け止められる
- 4年目以降に裁量労働制へ移行し、みなし残業込みの給与体系になることを理解した上で条件に納得できる
- チームで一つの案件を作り上げる働き方に、やりがいを感じられる
- 自分の携わった仕事が世の中に形として出る実感を、対価の一つとして重視できる
迷ったら、この一点で決めていい
博報堂の「激務」の中身は、単純な長時間労働の話ではありません。クライアントワークである以上、業務量が自分でコントロールしにくいタイミングがあることです。
繁忙期には残業が集中し、担当するクライアントや案件によって忙しさの差が大きいという構造は、広告業界全体に共通しています。これを「仕事の一部」として受け止められるか、「予測できないことが不安」と感じるかが、入社後の納得感を分けます。
「激務」と言われる理由は何か
先に断っておくと、博報堂固有の労災認定や労働基準監督署の是正勧告といった、行政・司法が関与する重大事案は今回の調査では確認できませんでした。ここで整理する3つは、いずれも公式データや複数の独立した口コミが一致して示している構造的な理由です。
理由1:4年目以降、裁量労働制に切り替わる
キャリコネや転職会議など複数の口コミサイトで、共通して語られている構造があります。入社から3年目までは残業代が実費で支給されるが、4年目前後から裁量労働制(企画業務型など)に移行し、みなし残業時間が月80時間程度に設定されるという証言です。
ある口コミでは「4年目から裁量労働になるので、残業をすればするほど損をする。みなし残業は80時間つくが、80時間以上は恐らく働く」と語られています。
これは会社の公式な制度説明による裏付けには至っていない、口コミベースの情報です。ただし複数のサイトで独立して同じ構造が語られている点は、一致度として無視できません。
理由2:クライアントワークゆえに、部署・案件で忙しさの差が大きい
転職サイトの比較記事は、電通・博報堂・ADK・サイバーエージェント各社の口コミを分析し、「月20〜120時間」という幅広い分布があり、同じ会社でも配属先やクライアントによって残業時間が大きく異なると指摘しています。
特にクリエイティブ局は納期直前に業務が集中しやすく、営業局(アカウントエグゼクティブ)はクライアント対応と社内調整の両方を抱えるため残業が突出しやすいと、複数の口コミで言及されています。土日に企画書作成が入ることがあるという声もあります。
理由3:広告業界全体が、2016年の電通事件を機に働き方改革を迫られた
2016年、電通の新入社員が過労自殺し、労災認定と労働基準法違反での書類送検に至りました。これは電通という別法人の事件ですが、業界全体に大きな衝撃を与え、博報堂を含む広告業界全体が働き方の見直しを迫られる契機になりました。
博報堂側も2017年に「ワークスタイルデザイン局」を新設し、2022年には「サイレント10」(夜10時以降の不要な連絡制限)や「プラ休5」(毎月1日以上の有給取得義務化)といった制度を導入しています。
なお、博報堂固有の重大な行政処分や労災認定事案は、今回の調査では確認できませんでした。
ここまでが要点です。この3つを読んで「クライアントワークの構造は割り切れる」と思ったなら、あとは数字を確認するだけです。
以下は、それぞれを数字と一次情報で確かめていきます。よく見る「平均年収1000万円超」が、実は持株会社の174人だけの数字だという話も、この後で説明します。
編集部
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参考になるデータ
判断材料になる数字を、出どころつきで並べます。
先に注意してください。博報堂の数字は、「株式会社博報堂DYホールディングス(持株会社)」「株式会社博報堂(事業会社)」「博報堂・MP(博報堂+博報堂DYメディアパートナーズの合算)」「博報堂DYグループ(連結全体)」の4つが混在して引用されがちです。
同じ「博報堂」という言葉でも、対象人数がまったく違います。
平均年収1000万円超は、持株会社174人の数字
有価証券報告書によれば、株式会社博報堂DYホールディングス(提出会社=持株会社単体)の平均年間給与は、2025年3月期で1,091万5千円(従業員174名、平均勤続年数12.8年)です。
前年の2024年3月期は1,157万9千円(従業員149名、平均勤続年数11.1年)でした。
ただしこの174名は、博報堂・大広・読売広告社・博報堂DYメディアパートナーズなど各事業会社からの出向者で構成される持株会社の組織です。有報の注記にもそう明記されています。
つまり1,091万円は、持株会社に出向している174人の平均です。博報堂本体で働く一般社員の給与水準を示す数字ではありません。
博報堂本体(従業員4,654名、2025年9月時点)の平均年収は、有価証券報告書にも公式サイトにも一次情報としての開示が見当たりません。
doda等の転職メディアが示す「推計1,030万〜1,092万円」は、あくまで転職サイト側の独自集計であり、公式発表ではない点に注意してください。
離職率6.4%は、博報堂とメディアパートナーズの合算値
博報堂DYホールディングスの「ESGデータブック」は、正社員離職率として2020年度2.2%、2021年度6.4%、2022年度5.3%、2023年度6.7%という数字を開示しています。
ただしこのデータブックは、集計範囲が年度によって変わることを凡例で明示しています。
2020・2021年度は「博報堂・MP」=株式会社博報堂と株式会社博報堂DYメディアパートナーズの2社合算、2022・2023年度は「国内主要6社(統合後)」というより広い範囲です。
6.4%は博報堂単体の数字ではなく、博報堂単体でもグループ全体でもない、2社合算の中間的な集計です。直近の2023年度は6.7%で、経年で見ても6〜7%台に大きな悪化はありません。
残業時間は公式で月26〜47時間、口コミでは月80〜100時間超
同じESGデータブックによれば、平均残業時間(月・博報堂・MP合算/国内主要6社)は2020年度27.1時間、2021年度26.4時間、2022年度47.3時間、2023年度33.5時間と、年度によって大きく振れています。
一方で口コミサイトでは、水準がまったく異なる数字が語られています。キャリコネの口コミ(26歳女性・営業職)では月間残業90時間、うちサービス残業20時間という具体的な報告があり、他の口コミでも繁忙期は月80〜100時間超という声が複数見られます。
「公式開示は月26〜47時間(年度で変動)、口コミベースでは月80〜100時間超」という2つの水準が併存していると理解してください。前者は会社が労務管理データから集計した公式値、後者は個人の自己申告ベースの投稿で、算出方法が異なるため単純比較はできません。
なお、新卒総合職の初任給は年俸制360万円(月額換算約30万円、学部卒・院卒で差なし)と、新卒採用公式サイトに明記されています。
4年目からの裁量労働制を、もう一段深く見る
みなし残業80時間という数字の位置づけ
複数の口コミサイトで一致しているのは、入社3年目まではいわゆる固定給+実費残業代の体系だが、4年目前後から裁量労働制(企画業務型など)に移行するという証言です。裁量労働制のもとでは、みなし残業時間が月80時間程度に設定されるとされています。
これは会社の公式な制度説明による一次資料での裏付けには至っていません。ただしキャリコネ・転職会議という独立した2つの口コミサイトで、同じ「4年目・裁量労働・みなし80時間」という構造が語られている点は、偶然の一致とは考えにくいものです。
制度としてのみなし労働時間と、実際に何時間働いているかは別の話です。
「みなし残業80時間がついているから月80時間残業する」わけではなく、逆に「80時間を超えて働いても追加の残業代が出にくい」という、中堅以降ならではの給与構造として理解しておくのが実態に近いでしょう。
会社側の働き方改革の取り組み
博報堂DYグループは2022年に「Time Value Management」という指針を掲げています。
「サイレント10」(平日午後10時以降の不要な連絡制限)、「プラ休5」(毎月最低1日の有給取得義務化)、フリーバカンス(年2回・5日連続の休暇)といった制度を導入しています。
健康診断受診率94.6%、健康経営優良法人の3年連続認定といった数字も公式サイトで開示されています。
一方で残業時間・有休取得率そのものの推移データは、この制度紹介ページには開示がありません。制度が存在することと、その効果がどこまで数値で裏付けられているかは、別に見る必要があります。
選考の流れと採用規模
現在の新卒本選考は、公式サイト上で「総合職」1本に統一されています。ビジネスプロデュース、ストラテジックプランニング、クリエイティブ、PR、メディアプロデュースといった職域は、入社後の配属で分かれる形です。
「クリエイティブ職」という呼び方は口コミ・就活市場では今も一般的ですが、本選考のエントリー区分としては存在しません。
選考フローは、エントリー(書類・適性検査)から始まり、書類選考、複数回の面接、グループディスカッションを経て内々定に至る流れです。
インターンは職種色の強いコース制(ビジネス総合系・デザイン系・データサイエンス系)になっており、夏・冬のインターン経由が本選考の主要な入口になっているという説明が就活メディアに複数見られます。
新卒採用人数は年度によって変動があり、2023年180名、2024年175名、2025年は116〜118名という集計が複数の就活メディアで確認できます。
採用大学は慶應義塾大学・早稲田大学・東京大学が上位常連ですが、美大や地方大学からの採用実績もあり、明示的な学歴フィルターの有無は公式には確認できていません。
よくある質問
博報堂の平均年収は本当に1000万円超ですか?
「平均年収1,091万円」「1,157万円」としてよく引用される数字は、博報堂本体ではなく親会社の株式会社博報堂DYホールディングス(持株会社)単体、従業員174名の平均年間給与です(2025年3月期)。この174名は博報堂など各事業会社からの出向者で構成される少人数の組織であり、博報堂の一般社員の給与水準ではありません。
博報堂本体(従業員4,654名)の平均年収は、一次情報である有価証券報告書にも公式サイトにも開示がなく、doda等の転職メディアが示す「推計1,030万〜1,092万円」も公式発表ではない集計値です。博報堂単体の平均年収は、現時点で公式には非開示というのが正確な答えです。
離職率6.4%は博報堂だけの数字ですか?
違います。6.4%は2021年度の「博報堂・MP」、つまり株式会社博報堂と株式会社博報堂DYメディアパートナーズの2社を合算した集計です。博報堂単体のみの離職率は開示されていません。
同じ集計範囲で見ると、2022年度5.3%、2023年度6.7%(この年度からは集計範囲がさらに広い「国内主要6社」に変更)と推移しており、6.4%だけを切り取って高い・低いと判断するのは早計です。なお博報堂単体で唯一開示されている会社別データは平均勤続年数12.9年(2023年度)で、これは離職率とは別の指標です。
なぜ「博報堂 激務」の検索が急に増えているのですか?
急増の直接的な原因を特定できる一次データは見つかりませんでした。時期的に符合しそうな要因としては、広告・PR業界の人気企業ランキングで博報堂グループが上位を維持し続けていることや、新卒採用サイトのリニューアルなど、就活生の関心の高まり自体が挙げられます。
断定的な理由づけは避け、関心が高まっているタイミングだからこそ、数字を一次情報で確かめておく価値があると捉えてください。
同じ広告業界で、働き方が違う会社
「広告業界に興味がある」ことと「博報堂のクライアントワークの構造が合う」ことは、別の話です。
前者が理由でここを受けようとしているなら、同じ広告・マスコミ業界でも事業構造がまったく違う会社を先に見てから決めても遅くありません。
| 企業 | 働き方の違い |
|---|---|
| 電通 | 国内広告費シェア首位。持株会社「電通グループ」の中核事業会社で、規模・クライアント数ともに博報堂を上回る。2016年の過労自殺事件を機に、業界内で最も踏み込んだ制度改革を進めてきた経緯がある |
| サイバーエージェント | 広告・ゲーム・メディアの三位一体で展開する独立上場企業。広告代理店的な受託構造だけでなく、自社サービス(ABEMA等)への長期投資という別軸のキャリアがある |
同じ「広告に関わる仕事」でも、法人の位置づけ(上場か非上場か)や事業構成は会社ごとに異なります。
比較対象を持つことは、志望度を下げる行為ではありません。クライアントワーク特有の忙しさの波を、自分がどこまで引き受けられるかを、内定前に言葉にする作業です。
まとめ
博報堂が「激務」と言われる理由は3つでした。4年目以降の裁量労働制への移行、クライアントワークゆえの部署・案件による忙しさの差、そして電通事件を機に業界全体が働き方改革を迫られてきた文脈です。
そして数字を確かめると、見え方が変わります。「平均年収1000万円超」は持株会社174人の数字であり、博報堂本体の一般社員の年収は公式には非開示です。
「離職率6.4%」も博報堂単体ではなく、博報堂DYメディアパートナーズとの合算値です。残業時間は公式開示で月26〜47時間、口コミでは月80〜100時間超と、両方の水準を知っておく必要があります。
そのうえで、問いは一つです。クライアントの都合で業務量が波打つ働き方を、割り切れるか。
割り切れるなら、企画の仕事に関わりながら経験を積める、十分に合理的な選択肢です。割り切れないなら、受けないほうがいい。「平均年収1000万円超」という、自分には対応しない数字だけを見て決めることだけが、一番避けたい結末です。
よくある質問
- 博報堂の平均年収は本当に1000万円超ですか?
- 「平均年収1,091万円」「1,157万円」としてよく引用される数字は、博報堂本体ではなく親会社の**株式会社博報堂DYホールディングス(持株会社)単体**、従業員174名の平均年間給与です(2025年3月期)。この174名は博報堂など各事業会社からの出向者で構成される少人数の管理部門的な組織であり、博報堂の一般社員の給与水準ではありません。博報堂本体(従業員4,654名)の平均年収は、一次情報である有価証券報告書にも公式サイトにも開示がなく、doda等の転職メディアが示す「推計1,030万〜1,092万円」も公式発表ではない集計値です。博報堂単体の平均年収は、現時点で公式には非開示というのが正確な答えです。
- 離職率6.4%は博報堂だけの数字ですか?
- 違います。6.4%は2021年度の「博報堂・MP」、つまり株式会社博報堂と株式会社博報堂DYメディアパートナーズの2社を合算した集計です。博報堂単体のみの離職率は開示されていません。同じ集計範囲で見ると、2022年度5.3%、2023年度6.7%(この年度からは集計範囲がさらに広い「国内主要6社」に変更)と推移しており、6.4%だけを切り取って高い・低いと判断するのは早計です。なお博報堂単体で唯一開示されている会社別データは平均勤続年数12.9年(2023年度)で、これは離職率とは別の指標です。
- なぜ「博報堂 激務」の検索が急に増えているのですか?
- 急増の直接的な原因を特定できる一次データは見つかりませんでした。時期的に符合しそうな要因としては、広告・PR業界の人気企業ランキングで博報堂グループが上位を維持し続けていることや、新卒採用サイトのリニューアルなど、就活生の関心の高まり自体が挙げられます。断定的な理由づけは避け、関心が高まっているタイミングだからこそ、数字を一次情報で確かめておく価値があると捉えてください。