夏が終わって、キャンパスに秋の空気が混じり始めた。それなのに、スマホの就活アプリには「内定」の二文字がまだ表示されていない。「秋採用」という言葉で検索してはみたものの、サイトによって書いてあることが違っていて、結局「厳しいのか、まだチャンスがあるのか」がよく分からないまま、また不安だけが積み重なっていませんか。
友人が「もう就活終わった」と言うのを聞くたびに、自分だけ置いていかれている気がしてくる。「秋からの就活なんて、もう手遅れなのでは」と、スマホを閉じたあとも同じ不安がループしていませんか。
まず伝えたいのは、秋採用は毎年当たり前に存在する採用の形であって、あなたが特別に出遅れた結果ではないということです。この記事では、裏付けのある数字だけを使って秋採用の実態を確認したうえで、志望レベル別にどう動けばいいかを正直に、そして「秋採用は厳しい」と感じる原因を一つずつ整理していきます。
秋採用は「よくあること」——データで見る現在地

まず、感覚ではなくデータで現在地を確認しましょう。
秋も採用を続ける企業は、珍しくもマイナーでもない
マイナビキャリアリサーチLabの「2026年卒 企業新卒内定状況調査」(2025年9月5日〜10月3日、1,810社対象)によると、11月以降も採用活動を継続する予定と回答した企業は59.4%にのぼります。同じ調査で、採用予定数に対する内定者数の割合を示す「充足率」は69.7%で、4年連続の減少でした。つまり、秋の時点で採用予定数を満たせていない企業のほうがまだ多く、秋にも採用を続けることは経営判断としてごく普通に行われています。「秋採用をしている会社は人気がない会社」という思い込みは、少なくともこの数字からは裏付けられません。
秋も就活を続けている学生は、あなただけではない
同じくマイナビの「大学生キャリア意向調査」によると、9月時点で就職活動を継続している学生は18.9%、10月中旬時点でも15.3%でした。就活情報サイトの中には「9月時点で就活継続中は1割程度」と紹介しているものもありますが、この一次データではおよそ2割弱、10月中旬でも7人に1人程度が継続中であり、決して「ごく少数の例外」という規模ではありません。就職みらい研究所「就職プロセス調査」でも、26卒の進路確定率は9月1日時点で86.3%、10月1日時点で88.2%と、10月に入ってもなお1割以上の学生の進路が確定していない状態が続いています。
秋採用の制度・スケジュールを正確に理解する

まず「秋採用」という言葉そのものの正体を、制度面から確認しておきます。
秋採用とは何か——正式な制度用語ではなく、企業・メディアの通称
内閣官房が文部科学省・厚生労働省・経済産業省と連携して発出している就活スケジュールの要請文書(2026年度卒業予定者向け、令和7年3月21日付)には、卒業・修了年度の3月1日以降に広報活動を開始し、6月1日以降に採用選考活動を開始し、10月1日以降に正式な内定を出すという日程ルールが明記されています。この一次文書を確認する限り、「秋採用」という言葉は一度も登場しません。つまり秋採用には、開始月・終了月を定めた公式なルールが存在しないのです。実務上は、正式な内定解禁日である10月1日前後から年内にかけて企業が独自に行う追加募集を指す通称として使われている、と理解しておくのが実態に近いといえます。春〜夏の採用が「多くの企業が一斉に動く一括採用の枠」だとすれば、秋採用はこの一括採用で計画人数に届かなかった企業の欠員補充や、通年採用の一環として秋にも選考機会を設ける企業の活動が中心で、応募者側から見れば「必要に迫られて動いている企業を見つけにいく時期」という向き合い方の違いになります。
なぜ企業は秋にも採用するのか
企業が秋にも採用を続ける理由は、主に次の3つに整理できます。
- 採用予定数に届いていない:前述のとおり、26卒採用の充足率は69.7%にとどまり、4年連続で低下しています。多くの企業が「予定していた人数を採りきれていない」状態で秋を迎えています。
- 通年採用を導入している:経団連の調査では、新卒採用で通年採用(入社時期を年複数回設定する場合を含む)を実施している企業は、2024年調査で27.7%、2021年調査で32.7%でした(いずれも経団連会員企業を中心とした任意回答調査で、単純な時系列比較はできない点に注意が必要です)。約3割弱の企業が、そもそも「春夏に採りきる」という発想自体を持っていません。
- 内定辞退の補充・優秀な人材の確保:複数内定を得た学生が一部を辞退することで生まれる欠員を、秋に改めて募集する企業もあります。留学から帰国した学生など、春夏の選考スケジュールに合わせにくかった層を積極的に採用したい企業もこの時期に動きます。
秋採用を行う企業の特徴——「無名の中小企業だけ」ではない
秋採用というと中小・ベンチャー企業を思い浮かべがちですが、実際には多様な企業が含まれます。大量採用を行う大手企業の欠員補充、独自の採用スケジュールを持つ外資系企業、知名度が低いために春夏で母集団を集めきれなかった中小企業、大手の子会社(親会社と時期をずらして採用コストを抑える狙い)、地方の企業(公務員試験の結果が出た後に動く学生を狙う)など、背景はさまざまです。「秋採用=妥協」ではなく、「秋採用=理由があって今も探している企業群」と捉え直すと、見え方が変わってきます。
志望レベル別「秋の動き方」——正直な条件分岐

秋採用への向き合い方は、「今どのレベルで内定を目指したいか」によって大きく変わります。どのレベルの読者にも同じ助言をするのは誠実ではないので、ここは正直に分けて書きます。
大手・人気企業を諦めずに継続したい人
大手企業の秋採用は、内定辞退の欠員補充や独自スケジュールの外資系企業が中心で、募集人数自体は多くありません。応募が集中しやすく、春夏以上に「なぜこの時期まで、なぜこの会社なのか」を明確に語れることが必須になります。エントリー数を絞る代わりに、1社ごとの企業研究・志望動機の作り込みに時間を配分してください。同時に、大手企業ほど公開情報の少ない欠員募集を行うケースがあるため、持ち駒の増やし方にあるようなスカウト型サービスで「探しにいかなくても声がかかる」経路を並行して仕込んでおくことが有効です。
業界の幅を広げてでも内定が欲しい人
これまで志望していなかった業界・企業規模にも目を向けられる人は、秋採用でもっとも選択肢が広い層です。前述のとおり秋採用を行う企業は多様で、母集団形成に苦戦していた中小企業や、通年採用を前提とする企業と出会える可能性が高くなります。「知らなかった企業に興味を持てるか」を自分に問い直すところから始めてください。
とにかく持ち駒を増やして安心したい人
内定の有無そのものより、まず選考が進んでいる状態を作りたい人は、エントリー数を絞りすぎないことが最優先です。ナビサイトでの検索に加えて、企業側から声がかかるスカウト型サービスに登録しておけば、自分で探しきれない範囲の求人にもアクセスできます。持ち駒がゼロに近い状態への向き合い方は、持ち駒ゼロの記事でさらに詳しく解説しています。
「秋採用は厳しい」と感じる原因チェックリスト

「秋採用は厳しい」という言葉の中身を分解すると、多くは対策できる原因に行き着きます。当てはまるものを確認してください。
①「倍率」という発想そのものが実態とズレている
新卒採用の合否は「応募者数÷募集人数」という倍率だけで決まるわけではありません。特に秋採用のように募集人数が少ない枠では、応募者同士の相対的な競争よりも、企業が定める採用基準を満たしているかどうかで判断される傾向があるとされています。逆に、大量採用枠や人気企業では応募が集中し、相対評価的な競争の性質が強くなる場合もあります。「倍率が高そうだから諦める」のではなく、「その企業が何を基準にしているか」を確認しにいく方が、恐怖の正体に近づけます。
②「なぜ今も就活しているのか」への回答を用意していない
秋採用の面接では、ほぼ必ずといっていいほど「なぜこの時期まで就活を続けているのか」「なぜ最初からこの企業を志望しなかったのか」を聞かれます。ここで「内定が出なかったから」とだけ答えるのは避けたいところです。振り返ると、多くの学生は「反省点→改善した行動→今の志望軸」という順番で語ると納得感を持たれやすいようです。たとえば「当初は業界を絞りすぎていたが、自己分析をやり直して軸を広げた結果、今この企業を志望している」という骨格です。事前にこの回答を言語化しておくかどうかで、面接の手応えは大きく変わります。
③春夏の振り返りをしないまま突入している
春夏の選考でどこで止まっていたか(書類、Webテスト、一次面接、最終面接)を振り返らないまま秋に突入すると、同じ原因でまた止まってしまいがちです。落ちたES・面接を記憶が新しいうちに見直し、結論から書けていたか、企業ごとに言葉を合わせられていたかを点検してください。ガクチカに書ける材料が薄いと感じるなら、ガクチカが本当にない人向けの記事から立て直すのも一つの方法です。
④応募先の絞りすぎ・広げすぎ
秋採用で苦戦する原因としてよく挙げられるのが、志望業界・企業規模を絞りすぎていることです。一方で、闇雲にエントリー数だけを増やしても、1社ごとの準備が薄くなり書類選考すら通過しにくくなります。「軸を広げる」ことと「対策を薄めること」は別の話だと意識してください。
秋を巻き返す時系列ロードマップ

原因を確認したら、ここからは時系列で行動に移す番です。
8月:振り返りと持ち駒補充の準備
まずは春夏の選考を振り返り、どこで止まっていたかを言語化します。同時に、秋にエントリーできる企業のリストアップと、企業側からオファーが届くスカウト型サービスへの登録を始めるタイミングです。
9月:秋採用エントリー本格化・「待ちの持ち駒」を仕込む
OfferBoxは27卒だけで25万人が登録し、累計導入企業は22,767社(2026年5月時点・公式発表)、東証プライム上場企業の70%が利用しています。キミスカも1学年あたり約15万人が登録し、就活生の3人に1人が利用する規模です(いずれも学生の登録・利用は無料)。自分から探すエントリーに加えて、プロフィールを充実させたスカウト型サービスを併用しておけば、志望していなかった企業から声がかかることもあります。9月は、この「待ちの持ち駒」を仕込む効果が最も出やすい時期です。
10月〜12月:選考ラッシュ・内定式、そして冬採用への切り替え
10月1日は政府ルール上の正式な内定解禁日で、多くの企業がこの前後に内定式を行います。周囲の内定式の話がSNSに流れてくる時期ですが、内定式に呼ばれていないことは、これから内定が出ないことの証明ではありません。この時期は秋採用の選考も本格化するタイミングなので、エントリー数を止めずに、面接での「なぜ今も就活しているのか」への回答を磨き続けてください。秋採用でうまくいかなくても、就活が終わるわけではありません。経団連の調査で通年採用を導入している企業が27.7〜32.7%程度存在することからも分かるとおり、年末から年明けにかけても選考機会を持つ企業は一定数あります。「秋で決着をつけなければ」と自分を追い込みすぎず、12月以降は冬採用への切り替えも選択肢に残しておいてください。
秋採用からの巻き返しパターン

秋採用で内定を得る経路には、いくつかの定番パターンがあります。特定の誰かの体験ではなく、就活の現場でよく見られる一般的な傾向として紹介します。
志望軸を絞りすぎていたことに気づき、視野を広げて内定するパターン
大学4年の9月頃、就活が長期化して行き詰まった学生が、大学のキャリアセンターや就職エージェントに相談し、自己分析をやり直すというのはよくある巻き返しの入り口です。「志望業界・企業規模を絞りすぎていたこと」に気づき、これまで見ていなかった業界にも目を向け直した結果、10〜12月にかけて内定を得る、という経路は秋採用における定番パターンの一つです。
出遅れの幅が大きくても、秋からの巻き返しは間に合う
留学からの帰国などで、周囲より大幅に就活のスタートが遅れるケースもあります。9月から就活を本格的に始め、就活エージェント等の第三者を頼りながら自己理解を深め、12月頃までに志望企業から内定を得る、という経路も珍しくありません。出遅れの幅が大きいほど、一人で抱え込まず第三者の視点を借りることが巻き返しの鍵になるようです。
進路変更をきっかけに、軸を作り直して内定するパターン
公務員試験が不合格に終わり、秋から民間就職に切り替える学生も一定数います。切り替えのタイミングで自己分析をやり直し、「なぜ民間か」「なぜこの業界か」という軸を新たに作り直したうえで、面接対策を徹底し、内定に至るというのもよく見られる経路です。進路変更そのものは、秋採用の面接で正直に説明材料にできます。
視野を広げるなら、この業界・企業から

「今まで見ていた企業だけ」が選択肢ではありません。知名度だけで判断せず、業界研究を広げてみましょう。
| 企業 | 秋採用の読者に刺さるポイント |
|---|---|
| 伊藤忠商事 | 総合商社の中でも非資源分野に強く、多様な業界と接点を持てる応募先の一例 |
| NTTデータ | IT・SIer大手。母集団が大きく、業界の幅を広げる際の入り口になりやすい |
| 大和証券 | 金融業界の中でも新卒採用の間口が広く、文系・理系どちらの視野拡大にも使いやすい |
| 星野リゾート | 観光・サービス業界の代表格。知名度だけで選んでいなかった業界の一例として |
| ミズノ | スポーツ用品メーカー。BtoC・ものづくりの視点を持つ応募先として |
いずれも「これまで見ていた企業だけが持ち駒ではない」ことを外すための一例です。秋にエントリー先を広げる際、業界研究の入り口として使ってください。
焦りとの付き合い方

最後に、テクニックより先に効く話をします。
内定式の話題との距離を取る
10月前後は、周囲の内定式報告がSNSに流れやすい時期です。うまくいっている場面だけが切り取られていることを思い出し、必要なら通知をオフにするなど、意図的に距離を取ることも立て直しの一環です。
「秋採用に来た理由」を恥じず、一人で抱え込まない
秋採用に至った経緯は人それぞれです。振り返りと改善を重ねた末に秋を迎えているなら、それは十分に胸を張れる経緯です。面接で聞かれたときも、隠すのではなく、反省点と改善行動をセットで語る材料として使ってください。また、秋採用の準備は情報収集の負担も大きく、一人で抱え込むと消耗しやすくなります。大学のキャリアセンターや就職エージェントに今の状況を話してみてください。気持ちの落ち込みが強く、眠れない日が続くようなときは、テクニックの前に、大学の学生相談室など専門の窓口に相談することも選択肢に入れてください。
まとめ:秋採用は「理由があって今も探している企業」と出会う時期

最後に、この記事の要点を持ち帰りリストにします。
- 26卒採用で11月以降も採用を続ける予定の企業は59.4%、充足率は69.7%にとどまる(マイナビ調査)。秋採用は珍しい現象ではない
- 9月時点で就活継続中の学生は18.9%、10月中旬でも15.3%。秋に就活を続けているのはあなただけではない
- 「秋採用」は政府文書に登場しない通称で、公式な期間の定めはない。「いつまで」は志望先ごとに確認するのが確実
- 「倍率が高いから厳しい」ではなく、応募人数の少ない枠ほど採用基準を満たすかどうかが重視される傾向がある
- 志望レベル(大手継続・業界拡大・持ち駒優先)によって、秋の動き方は正直に変えていい
秋採用は、あなたが出遅れた証拠ではなく、理由があって今も学生を探している企業と出会えるタイミングです。今日できる一番小さな一歩として、春夏の振り返りとスカウト型サービスへの登録から始めてみましょう。
よくある質問
- 秋採用はいつまで続きますか?
- 「秋採用」は法律や政府文書で期間が定められた制度ではなく、企業が独自の判断で行う追加募集の通称です。そのため公式な終了日はありません。実務上は10〜11月頃に内定を出す企業が多い一方、採用予定数に届いていない企業や通年採用を行う企業は12月以降、年明けまで募集を続けることも珍しくありません。「いつまで」を気にするより、志望する企業・業界の募集状況を個別に確認し続けることが確実です。
- 秋採用は本当に厳しいのですか?
- 「厳しい」か「受かりやすい」かを一律には言えません。人気企業・大量採用枠は応募が集中しやすく、狭き門になりやすい一方、企業が「採用予定数に届いていない」「通年で採用している」という理由で秋も募集している場合、応募者数そのものは春夏より少なくなる傾向があります。マイナビの調査では26卒採用で秋以降も採用を続ける予定の企業が59.4%にのぼり、充足率は69.7%にとどまっています。秋採用をしている企業が「不人気だから」とは限らず、厳しさの中身は志望先によって大きく変わります。
- 秋採用で内定が出なかったらどうすればいいですか?
- 秋採用がうまくいかなくても、就活が終わるわけではありません。12月以降は冬採用に切り替える企業も多く、通年採用を行う企業(経団連の調査では新卒採用企業の27.7〜32.7%程度)は年明け以降も選考機会があります。この記事で紹介した「なぜ今も就活しているのか」への回答の整理や、志望軸の見直しは冬採用でもそのまま使えます。一人で抱え込まず、大学のキャリアセンターや就職エージェント、スカウト型サービスを併用しながら、選考機会そのものを絶やさないことを優先してください。
出典・参考資料(9件)
- 内閣官房・文部科学省・厚生労働省・経済産業省「2026年度卒業・修了予定者等の就職・採用活動に関する要請等について」別紙(令和7年3月21日付) https://www.keidanren.or.jp/announce/2025/0325_betten.pdf
- 内閣官房「2026(令和8)年度卒業・修了予定者等の就職・採用活動に関する要請」 https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/shushoku_katsudou_yousei/2026nendosotu/index.html
- マイナビキャリアリサーチLab「2026年卒 企業新卒内定状況調査」 https://saponet.mynavi.jp/column/detail/20251106202306.html
- マイナビキャリアリサーチLab「2026年卒 大学生キャリア意向調査9月・10月中旬」 https://career-research.mynavi.jp/reserch/20251010_103406/ https://career-research.mynavi.jp/reserch/20251028_103868/
- 就職みらい研究所「就職プロセス調査(2026年卒)」9月1日・10月1日時点 https://shushokumirai.recruit.co.jp/research_article/20250909001/ https://shushokumirai.recruit.co.jp/research_article/20251009001/
- 日本経済団体連合会「採用と大学改革への期待に関するアンケート結果」(2022年1月18日発表) https://www.keidanren.or.jp/policy/2022/004_kekka.pdf
- 日本経済団体連合会「2024年人事・労務に関するトップ・マネジメント調査結果」(2025年1月21日発表) https://www.keidanren.or.jp/policy/2025/007.pdf
- OfferBox 公式データページ・企業向けページ https://offerbox.jp/data https://offerbox.jp/company/
- 株式会社グローアップ プレスリリース(キミスカ・2024年2月) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000042.000008227.html